「ギミー・ヘブン」

ギミー・ヘブン スタンダード・エディション [DVD]

ギミー・ヘブン スタンダード・エディション [DVD]

共感覚」だとか「絶対の孤独」だとか、あるいは「あなたには世界がどんな風に見えるの」や「目が子供の頃に気に入ってたビー玉に似てる」といった感じの、いかにもな言葉や台詞に若干引きつつも、中盤まではそれなりに見られた。でも種明かしからは完全にダメだ…という気分に。
結局のところ、我侭で自己中心的な兄妹の話だったということ。そこに謎も何もない。フィクションの中で殺人を描き出すとき、そこに理由付けをすると大体胡散臭くなる。その理由付けを言葉で行うと一層。「本当に欲しいものができたの」で人を殺す、妹を幸せにするために他人に罪を被せる。そういった行動を、孤独とか復讐とかそんなもので理由付けするのは到底無理だし、しかも死んで終わるって。こいつら何の反省もないじゃん!と画面に向かって一人突っ込みをしてしまった。
麻里の「本当に欲しいものができたの」と、「お兄ちゃんの用意してくれた生活は私の望むものじゃなかった」というような発言が一致しないというか、彼女は結局兄の何を恨んだのだろう。もしも両親を奪われたことに対する恨みだけなら、もう少し釈然としたのだけど、そこで登場する欲しいもの(新介)というのがどうもずるいというか…やっぱり要は勝手だなということ。自分でもこの辺りはよくわからない。
結局のところ、全体が独りよがり。自己満足というか、邪気眼っていうのか。キャラクターのいかにも作りめいた雰囲気や台詞、そういったものが多分自分には受け付けなかったのだと思う。
あ、それと新介がどこで麻里とピカソの繋がりに気づいたのかわからない。共感覚で?と思ったけど、それこそ超能力じゃないんだから。
クライマックス、新介が麻里の首を絞めるシーンの、あの仰々しい音楽が気になった。あんなに盛り上げず、ピアノの音だけで静かに流すとかで十分なのに、なんだか「感動しろよ!」みたいに流されても。それもあんまり感動も何もない内容なのに。それとガーベラの花が、青(紫?)なのはわざとか…。ガーベラは色の種類が豊富な花(黒もあるとか)だけど、青・紫というのはないらしい。暖かい色味のイメージが強いから違和感。
安藤政信は恥ずかしい台詞が大量に出てくる役を、それほど違和感なくこなしていて流石。宮崎あおいは今まで「NANA」のイメージしかなかったんだけど、こういった役もできるのかと驚いた。得体の知れない怖さを感じさせてくれた。江口洋介は昭和の匂いがする。松田龍平は相変らず台詞が聞き取りづらい。でも種明かしのときのキョドりっぷりはよかった。