J.K.ローリング「ハリー・ポッターと秘密の部屋」

ハリー・ポッターと秘密の部屋

ハリー・ポッターと秘密の部屋

『穢れた血』に怒りながら『スクイブ』に笑う、というのがこの作品の怖いところなのかもしれないと思った。一応「笑うことじゃない」と前置きをするけれど、それで免罪符を与えてるだけっていう感じがしてしまう。
この物語はハリーたちにとって都合のいい物語なのだと思った。ハリーが嫌いだと思った人物の心理は、描かれていないのだ。ハリーという色眼鏡を通してしか。「意地の悪い表情」はハリーからの主観に過ぎない。神の視点からの物語として読むとどうなったのだろう。
要するにスネイプのことなのだけど。ジニーが攫われたとき「椅子の背をぎゅっと握り締め」た彼の感情や、ドラコに「校長職に志願なさっては?」と言われたときの真意、決闘クラブにわざわざ出てきた意味。それらを知りたいと思う。ジニーが攫われ、生徒たちに帰宅をするよう告げるとき気持ちを知りたい。しかし三人称を使ったハリー視点の物語だからこそ、後々の彼の行動が読者に混乱をもたらすわけだから仕方ない。
ロックハートの馬鹿っぷりが、全体的には暗い物語を明るくしてる。先生方が一致団結して彼を厄介払いするシーンは正直面白い。しかしここでハリーがそれを非難する様子がないのは、ハリー自身もロックハートが嫌いだから。主人公視点ってやっぱり怖いと思う。
最後の決闘シーンが、前作以上にご都合主義に感じる。いや、伏線はちゃんとあるんだけど。