「はじめての文学 桐野夏生」

はじめての文学 桐野夏生

はじめての文学 桐野夏生

元々そう得意でもなかったのだけど、特に2,3年前から「毒のある話」を意図的に避けてきたので、このひとの話はあまりにも刺激が強かった。痛い。特に最後の「植林」。
いわば「主人公になれないひと」が主人公として描かれている。主人公でありながら主人公になれないひとというのか。(「アンボス・ムンドス」はやや毛色が違うけれど。)そういった話が続く中で、最後に収録された「植林」。主人公になれない主人公が、「主人公になれた」と、一瞬だけ盛り上がった後に叩き落される衝撃。でも本当は少し違う方向で主人公になったのかもしれないけれど。
過酷過ぎるよなあ。もう少し優しくすることだってできる気がするのに。「植林」を読んでいて、角田光代の「トリップ」に収録された「カシミール工場」を思い出したのだけど、そちらの優しい最後に比べると本当にきつい。
「毒のある話」は読んでいて凄まじいエネルギーを消費するので、できるのならあまり読みたくないのだけど、じゃあ嫌いかというとそうではないので困る。