重松清「永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢」

永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢

永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢

30もの短篇が収録されているが、どれも上手い。ごくごく短いがきちんと完結している。ただ、それなりにぐっとくるが涙で視界が遮られるほどでもなく、それなりに考えさせるが短いのでさくさく次に進めてしまうのが良くもあり物足りなくもある。
そう、物足りないんだよね。折角現実とは違う世界観で描いているのなら、もうちょっと毒があったっていいと思う。『殺戮将軍の悲劇』あたりは少し近いかなと思ったけれど、いまいちなんか不発。悲しい話もあるけれど、基本的に主人公自体が通りすがりなので悲しみに浸りきれない。
それと永遠を生きるカイムの悲しさも、あまりにもダイレクトに語られ過ぎているのが残念だった。
決してつまらないわけじゃないんだけども。ゲームの中で読んだらまた違う感触だったのかも。