「血と骨」

血と骨 通常版 [DVD]

血と骨 通常版 [DVD]

血は母より、骨は父より受け継ぐ―――というのがタイトルの意味らしいので、親子の物語だと思い込んでいたのだけど、違う。これはあくまでも一人の男の物語。金俊平の暴力はあまりにも理不尽で、憤りがわいてくる。にも関わらず最後まで観てしまうのは、時折挿入される、例えば病気を患った愛人を介護するシーンだとか、娘の葬儀に殴り込んで「俺の娘どこやった」と怒鳴るシーンだとかが、妙に胸に迫るから。それを純粋な優しさとは思わない。でもこの男の暴力性だけではない何かを見せてくれるから、見届けたくなる。その最期はあまりにも寂しかったけれど。いや、必然か。ビートたけしはハマり役とかのレベルではなく、もう彼が実は本当に金俊平なんですよって言われたら私は信じる。それぐらいの凄まじさ。
息子役の新井浩文君は割と好きな役者なんだけど、残念ながらこのビートたけしの圧倒的な迫力の前では霞んでしまう。勿論そういう役回りだから仕方ないけど。彼が父親の家で暴れるシーンは、父親とに対比になっていて妙にせせこましいのが少し笑える。しかし父親の暴力を苦にして自殺未遂をした姉の報復のために刃物持って父親に立ち向かった彼が、いつの間にかその父に似ていくのは確かに親子の物語かも。憎んで、憎んで、意識した結果似ていくのかなあ。もうひとりの息子、オダギリジョーは出演時間の短さにも関わらずこちらも凄かった。
時代背景や文化などをもっと知りたいと思った。体力使いそうだけど小説も読んでみようかなあ。