宮川健郎編「児童文学―新しい潮流」
- 作者: 宮川健郎
- 出版社/メーカー: 双文社出版
- 発売日: 1997/05/01
- メディア: 単行本
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だから読んでいくとかえって新鮮だったりするのだが、案外暗い話が多くて驚いた。子供向けの話は明るいというのがどうも思い込みにあるのだが、考えてみると実際自分の子供時代、惹かれるのはむしろ暗い(重いという意味ではなく、部屋の隅っこや押入れ、あるいは路地裏のような、普段は見落としてしまう場所に似た暗さ)話だった。そして中でも、死というのは否応なく惹きつけられた。
印象深かったのは那須正幹「六年目のクラス会」から岩瀬成子「ダイエットクラブ」までの4本。
中村李衣「たまごやきとウインナーと」は子ども二人だけであることや、兄が幼い妹を面倒見ようとする姿に、映画「誰も知らない」を思い出して、私はネグレクトの話と受け取った。最後に出てくる母親は確かに子供に愛情を向けているとは思う。だがそこにどこか責任感が欠如した感じがあるのだ。ただ解説によればこの本に掲載されているの後に、翌日戻ってきた母親がお弁当を作る場面があったそうだが、それがあるのとないのでかなり印象が違う。ここで母親は「またやりなおしだわ。」と呟く。けれど、更に思う。この短い期間でも子どもたちは一度捨てられているのだ。それは厳然たる事実として存在するために、読後感はいいとは言えない。(妹そのこの保育園の先生の言及を兄が懸命に逃れたのは、この事実からの逃避とも受け取れるかもしれない)