「グッバイ、レーニン!」

グッバイ、レーニン! [DVD]

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笑いありの感動系家族映画だと思い込んでいたら、すごく社会派な内容だった。
信じていたものがなくなった。理想だと思っていた祖国は消え、正反対の主義が世の中に満ちていた。そういうとき、人はどうするのだろう。過去を否定するのか、今を否定するのか。どちらもを肯定して受け入れることができたら幸せだけど、人はきっとそんな風にはできないのだろうな。
東ドイツの姿は、かつての敗戦直後の日本にも重なるかもしれない。そしてもしかしたら、今の日本にも。国って、いとも簡単に消えてしまうのかもしれない。信じていたものが、当たり前のものが明日も当たり前だとは限らないのだと。
社会主義を理想と信じていた母のために嘘をつく息子。でも彼がそこまでするのは、実は自分自身の罪滅ぼしだったのか。だって母親が心臓発作起こしたのって、息子が自由化を訴えるデモに参加しているのを目撃したから。でも母親のための嘘が、だんだんと目的を変えていく。自分のための嘘へと変わる。旧体制を反対していた主人公が、旧体制へ依存していくようにも見えるのだからすごい皮肉。
資本主義がいいか、社会主義がいいかではなく、多分どちらになっても悲しいことはあって、喜びがある。でもただの市民にそれは選べることじゃない。彼らはただ翻弄された。
母親は途中できっと嘘に気づいていたんじゃないかと思う。
ヘリコプターに吊るされたレーニンの像が空中を旋回する光景があまりにもシュール。