「伝染歌」

2時間15分かけてAKB48のPVを見せられたような印象しか残らない。アイドル映画なら爽やか青春系で通した方が観る方としてもそういうものとして納得しやすくていいような気がする、というのは自分の偏見かもしれないけど。自分はホラー映画として観に行ってしまったので肩透かし。
自殺をテーマに扱った作品、先日も「悪夢探偵」で見たけど、悪夢探偵の方がまだ一貫性があった。この映画は方向性が途中で二転三転してしまって、怖さをどっちの方向に持って行きたかったのかがわからない。自分が怖いと感じたのは唯一、自殺ビジネスマンの男のアパート。自殺した子の目の写真をグラフにして貼っている光景はかなり怖い。日本ではもう随分前から自殺が社会問題の一つで、それを金銭的・あるいは快楽のために利用する人間がいるというのは、あってはならないこと。でもあるのかもしれない、そう思わせる時代だから。その点でこの部分は上手いと思った。でもその男は死んでいて、その理由もはっきりしないまま、今度は「悪霊がどうの」と言い始め、CGの餓鬼が出てきたりする。この映画はどういう方向で観客を怖がらせたかったのだろうか。よくわからないまま、中途半端に悲しくて感動的なエピソードを入れ、中途半端に悪役の霊能力者を登場させて…。
あんずのエピソードはありきたりな感じがするし、よくあるエピソードを悲劇的に昇華させるまでの描き方もされない。
ホラー以外の部分、主に学校風景の描き方も違和感。授業中、あんな風に意見を言う生徒なんているんだろうか。集会で大声で何かを発言する子、見たことない。(共学出身だから多少雰囲気は違うかもしれないけど)今の高校生って、もっと無関心なんじゃないかな。リアルに描くなら。大人への不信感を口にはしないで、ただ答えないこと、反応しないことで示している方が近いと思う。この辺りだけがやけに芝居がかっていて、でも雑誌編集者のシーンは台詞に台詞が被ったり、聞き取りにくい、いわゆる「リアル」な描き方。どっちかにしてよ、と思ってしまう。
1番置いてきぼりを食らったのはサバゲーのシーン。意味もなくくるくると回転するカット。被りまくる台詞。…これはテンポがいいというのとは違うのでは。手法に関してはあまり詳しくないし、そこまで気にしないけれど、でもやっぱりこれを見て「テンポがいい」とは思えない。
パンフレットにはやたら社会派、社会派と書かれていたけど、社会派を気取ってみただけに思えてしまう。今問題になっていること、話題になっていることを羅列しただけのような。警察への皮肉の描き方、学校の対応への皮肉もとってつけたような感じ。