「魂萌え!」

魂萌え! [DVD]

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予告見て楽しそうな映画だと思ってしまったんですが、考えてみたら原作が桐野夏生って、そんな楽しいはずがない。「はじめての文学」シリーズで読んだだけでも相当にきっつい話を書くと思ったのに。
最初、夫の死後にその浮気が発覚して、妻が爆発して反逆していく物語だと思っていた。もう知らんわ!と。でもそうじゃない。所々で爆発したりするけど、基本的にそれは小規模。風吹ジュン演じるトシコは周囲に勝手なことを言われっぱなし。そこ怒っていいよ!って観てる方が思うところでもなかなか怒らない。夫の長年の浮気のことも、結局子どもたちにさえ打ち明けなかった。いや、それはきっとプライドでもあったと思うけれど。
細部の演出の細かさ、ベテラン俳優陣の安定した演技がいい。変に捻っていないし、派手さはないけれど、その瞬間に心が揺れ動いたというのがきちんと伝わるのがいい。冒頭で出た鉄のフライパンを後半でテフロン加工のに変えるとかっていうのとか。
原作は未読だけど、多分かなり沿って作っているんじゃないかと思う。主要な登場人物に優等生的なひとがいなくて(1番優等生的なのは主人公かもしれないが、優等生的な分世間知らずで危なっかしい)でも実際の人間ってそういうとこあるよな…って思ってしまう。お前何を考えてるんだ!と登場人物に対して憤った後に、あーでもそういえば自分も…といやな反省を促してくれるところが。