小池昌代「裁縫師」

裁縫師

裁縫師

表紙やタイトルの雰囲気から、耽美で退廃的な空気をイメージしていたのだけど、短編集全体としての主題はそこにはなかったので、結局馴染みきれなかった。もっともっと浸れる空気が欲しい。なぜかうまく浸りきれない。地の分がやや饒舌な気がしてしまうのか。
「野ばら」がいちばん好き。ある日帰ってきたら、磨き上げられた大きなテーブルが、それに象徴される家族が消えていたという圧倒的な喪失感と『鋼鉄のように自由』という表現に惹かれた。