川島誠「夏のこどもたち」

夏のこどもたち

夏のこどもたち

熱くない青春は、もしかしたらリアルなのかもしれない。でもあまりにも熱がなさすぎる。これじゃ生きてるのか死んでるのかもわからない。どこか1点でいい、熱が欲しい。
主人公があまりにも冷めすぎ。何に対しても。家族にも、教師にも、そして同学年の生徒たちに対しても。友達ではない。主人公は周囲の人間を友達と思っていない。中途半端で自分では何もしないくせに、自己完結してしまっているので誰の影響も受けない。そんな彼の視点で語られているため、文章自体も鼻につく。全体に上から目線なのも不快。
最後に主人公がしようとすることも、近所に住んでる女教師をレイプするって…。しかもそれを‘馬鹿馬鹿しいとわかっていながら考える'というより、なんか厨二病みたいなノリなのがキツイ。それと放火犯を出すならもう少し前にちょっとでも伏線を張るべき。唐突過ぎる。
1番致命的に感じたのは題名に夏の、と銘打っておきながら、夏の空気を感じられないこと。湯本香樹実の『夏の庭』は読んでいると懐かしい夏の空気、匂いのようなものを感じるのだけど、この本にはさっぱりそれがない。舞台が夏なんだな程度。夏特有の鮮やかさもなければ倦怠感もない。