「ドクトル・ジバゴ」

ドクトル・ジバゴ 特別版 [DVD]

ドクトル・ジバゴ 特別版 [DVD]

アラビアのロレンス」で気になったオマー・シャリフの出演作ということで鑑賞してみました。
ロシア革命という激動の時代を舞台に、壮大なスケールの中で、そこに翻弄されるひとびとを繊細に描くバランスがたいへんすばらしい作品でした。台詞で多くを語らず、物語の流れや表情から観客に汲み取らせてくれる。驚いたのがジバゴとラーラが出逢ってからそういった関係になるまでにかなり時間がかかるということ。運命的な出逢いから、一度目の再会と別れを経て、二度目の再会で抑えていたものが爆発してしまうというのが、背徳的な関係に陥ってしまうことへの説得力を与えてくれる気がしました。
ジバゴの人物描写もとてもとても丁寧で、例えば森の中で見上げる空や、窓についた雪の結晶や、春の野の花に向ける笑顔。こういった純真な詩人としての彼の魅力を描きながら、反面その夢見がちな性格ゆえの愚かさ。コマロフスキーとの対比も効果的でよかったと思います。
夫の愛人であるラーラに手紙を託したトーニャ、ジバゴとの間にできた娘にトーニャと名づけたラーラ。ふたりの女性が高潔で美しい。特にラーラは、ともすればとても愚かな女性になりかねない中で魅力的に描かれていました。でもやっぱり、私は本妻のトーニャに思い入れてしまいます。